闘病5年間の記録  検査と手術
手術終了

2013年9月20日。12時間を超える手術が終了した。その後、約54時間のICU生活を終え、一般室に帰還できた。

時間は前後するが、手術までのことを振り返って見る。

確定と告知

入院した11日から膵癌を確定する検査。まずはMRIと内視鏡検査で十二指腸から膵臓方向のエコーをとる。次の日には、同様な内視鏡検査で十二指腸方向を針で刺して、生検体を直接採取。その検体を36時間程で検査し、検査で癌かどうかを確定させる。

13日予定通りに結果が出た。手術も確定した。13日の金曜日に最悪の結果なんてことにならず、手術することが決まり、ある面ホッとした。この日は伊藤医師と女房殿との時間が合わず、揃って話を聞くのは後でということになった。

15日日曜日、伊藤医師からの説明を受けた。公式に告知を受けたことになるのだろう。膵臓が萎縮、膵頭部にある腫瘤が癌であることが確認された。CTの映像から見るとリンパ球への転移の可能性があるが、手術しないと確認できない。手術中を拡大して、このリンパ球も切除することも視野に入れている。

すべての説明は、歯切れ良く、とにかく、迷いがない。言い切る。バサバサとデマ風説を切る。なかなか、心地よい。例えば、「放射線系治療では完治しない。副作用などが非常に多い。ただし、そこはあまり認識されていない。」「これって放射線被曝ですよね。」と聞くと「そうです。」と即答。「治験例が多く紹介されているが、確立された手術式とは比べものにならない。手術を避ける人のための口実に近い。惑わされて手術回避して亡くなる人が多いことに心を痛めている。」-という、感じ。二人とも納得して考えていたセカンドオピニオンも取る必要なしと結論づけた。

ちなみに、伊藤医師、急遽の日曜出勤ということもあってか、ジーパン、ペディキュア、高いパンプス!女医を演じる女優のようなお姿。賭けてもいい、外で見ると医者になんて見えない。

また、手術を担当する井上医師との面談もあった。大阪弁で楽しい話をされる方らしいが、さすがにこの日は笑いの要素無し。病理内容は、伊藤先生とほぼ一緒。主に手術に関しての説明。切除することより、縫合することの方が難しい。特に、膵管の腸への縫合が難題で今回完了させるかどうかは開腹後決める。日赤では、この手術に12時間ほどかける。他の病院では半分ほどで完了させるところもあるが、馬鹿丁寧にやるのが方針である。手術後、体重がおそらく15kgくらい減る。その後、5kgくらいのリバウンドがあるかもしれないが、10kgは確実だろう。などなど。

女房殿、私共々非常に好感をもった。井上先生もストレートな方。
「執刀医は、権威ではない。若手の40歳代に限る。」とは、女房殿の言。

検査そして検査

手術後に身体が持たないような状態では手術する意味が無い。月曜日から手術前日まで体の状況把握のため人間ドックより精密な検査を受けた。3日連続の内視鏡。ドックで終了できなかった大腸内視鏡検査もやった。そのほかには、胸、腹部レントゲン、CT、心臓エコー、脚部エコー、眼科検診。麻酔科の設問、ICUの説明と質問、手術室付き看護師からの質問。

特に血糖値をコントロールすることが重要であることから、16日から全尿検査を始めた。毎日の排尿を全て溜めておき一日に排出する全血糖を測定する検査である。最初の検査で通常の7倍の排出があり、欠食をもって対処することになった。つまり、ほぼ一週間口にしたのは水だけだったのである。

準備

入院準備は、体の準備と病室での生活の準備がある。体の準備は、前日の血糖値の調整。麻酔などを注入する点滴ルートのカテーテルの挿入。手首のルートの他に首の静脈から入れて血管内部を心臓の近くまで伸ばすルートを取り付けられた。体毛の除去。臍のごま掃除など。

生活の準備は、着るもの。手術後に使うガーゼなどの消耗品、飲料水などはともかく、退屈しないための準備が結構大変だった。2台のPCを持ち込んだが、その電源、Wifiのセットアップ、差し迫った引っ越しの準備に必要な資料。

1ヶ月から2ヶ月と言われていた入院生活の準備は 「おおごとや」と書いたが、想像以上に慌ただしかった。

そして手術へ

さて手術。癌推定から10日目。確定から7日目。いよいよ手術である。

まず、病室で手術着に着替え、昨日首筋にいれた点滴をひっさげて、手術出に向かう。入り口では、4組ほどが待っていて、何の渋滞かと思うと、これが手術待ち。ステンレスの大通りを挟み、両側にずらっと並ぶ手術室。これは、圧巻。この最新技術が俺を救うんだな。と、本気で思えてしまった。

今回の手術に際し、概要だけ聞くことにして、詳細はあまり気にしなかった。これは、良かったことだろう。背骨から入れる硬膜外麻酔をまずいれる。ときいた瞬間に、尿管結石の麻酔のトラウマを思い出していたのだが、今回は、細川先生が優しくほぐしてくれた言葉で、(実は、技術の進歩でしょう。)ほとんど痛みを感じず、その後は、闇の中へまっしぐら。

実は、手術について書けることはこれだけだったのである。

ICUでの目覚め

ICUで起こされるとホントに一瞬としか感じていなかった。そこでは、女房殿から、「切り取った内臓を見て、腫瘤を触ったよ。」と教えてもらっただけで、あとは再度昏睡。その後、54時間ほどICUにいたけれど、腹をJ字型に大きく切り裂いて中を引っかき回す施術を受けた人間とは思われない状況だった。後日傷跡を測ってみたら35cmだった。なんか「十文字腹」で切腹したような感じ。
で、まず、腹部が痛くない。2日目には、看護師さんに付き添われて歩行練習。約2時間ベッドから離れてテレビを見ていた。想像していたのと大違いだった。

そして翌3日目に一般病室に戻ったのである。